「もとのままのもんは骨と目ん玉と髪と耳とアソコぐらいなもんでね あとは全部つくりもんなのさ」。
大掛かりな全身の整形手術とメンテナンスにより、完璧な美しさを持つモデルの「りりこ」。
女優や歌手としても活躍し人気の絶頂を迎えるが、体は次々に異常を訴え始める。
それにつれてりりこの心の闇も濃く、深くなり、彼女の人生はやがて手もつけられなくなるほどに壊れてゆく。
りりこをスカウトして、美しく変貌させたモデル事務所の社長。
ひどい仕打ちをされても、りりこから離れられないマネージャーとその恋人。
生まれながらに美しいがゆえに、美に執着しない15歳の新人モデル。
最後まで、りりこを美しく仕上げることに全力を注ぐメーク担当者。
ある事件を追いかけるうちにりりこに出会い、シンパシーを感じ始める検事。
りりこをとりまく人々も絶妙に配置され、この物語を重層的で刺激的なものにしている。
醜かった主人公が美しく生まれ変わり、成功をおさめる。
たくさんの物語で描かれてきた、わかりやすくてドラマチックなその過程は、本書ではほんの少し触れられているにすぎない。
はじめからりりこは美しく成功の真っ只中にいて、彼女の向う先は破滅でしかないという不穏な空気が、物語の最初から濃厚に漂う。
その破滅の過程を、著者は、息苦しくなるほど丹念に描いていく。
最終章で描かれる、りりこの決着のつけ方は壮絶であるが、そこに含まれる不思議な「明るさ」のようなものが、読者の心をとらえて放さない。
(門倉紫麻)